運送業を営む事業者様から、「取引先からの要望で保管業務も始めたい」「手持ちの倉庫で倉庫業登録はできないか」といったご相談をいただく機会が増えています。特に、長年使用している倉庫が市街化調整区域にある場合、登録のハードルは格段に上がります。
「市街化調整区域にある倉庫だから登録は無理だろう」と諦めてしまうケースも少なくありません。しかし、一定の条件をクリアしていれば、登録できる可能性はゼロではありません。その鍵を握るのが、都市計画法に定められた「開発許可」の存在です。
この記事では、倉庫業登録を専門とする行政書士法人の視点から、市街化調整区域における倉庫業登録の難易度と、それを乗り越えるために不可欠な「開発許可」の重要性について詳しく解説します。
市街化調整区域とは?なぜ倉庫業登録が難しいのか
まず、倉庫業登録の前提となる「市街化調整区域」の基本的な性質について理解しておく必要があります。
- 市街化調整区域
- 都市計画法に基づき定められる区域の一つで、市街化を抑制すべき区域とされています(都市計画法第7条第3項)。この区域では、自然環境や農地などを保全するため、原則として新たな建築物の建築や宅地造成などの開発行為が厳しく制限されています。
倉庫業を営むための「営業倉庫」は、事業活動を目的とした建築物であり、市街化を促進する要因と見なされがちです。そのため、市街化を抑制するという市街化調整区域の趣旨とは相容れず、原則として営業倉庫の新築や、既存建物を営業倉庫として使用することは認められていません。これが、市街化調整区域での倉庫業登録が難しい根本的な理由です。
倉庫業登録の絶対条件:都市計画法・建築基準法への適合
倉庫業登録の申請を検討する際、多くの方が倉庫業法の施設設備基準に目が行きがちです。しかし、その前にクリアしなければならない、より根本的な大前提があります。それは、登録しようとする倉庫が「適法な建築物」であることです。
具体的には、以下の法律に適合している必要があります。
- 都市計画法: 用途地域や開発許可など、土地利用のルールに適合しているか。
- 建築基準法: 建築確認や完了検査を受け、建物の構造や安全性が法的に証明されているか。
特に市街化調整区域では、そもそも建築許可を得ずに建てられた建物や、農業用倉庫など別の目的で許可を得た建物を、届出なしに増改築してしまっているケースが散見されます。このような違法建築物や目的外使用の状態では、倉庫業登録の審査の土俵に上がることすらできません。
市街化調整区域での登録可否を分ける「開発許可」の重要性
では、市街化調整区域にある倉庫が「適法な建築物」であり、倉庫業登録の可能性があると認められるのはどのような場合でしょうか。ここで最も重要になるのが「開発許可」の有無とその内容です。
- 開発許可
- 都市計画法第29条に基づく許可制度で、主として建築物の建築などを目的とする土地の区画形質の変更(開発行為)を行う際に必要となります。市街化調整区域では、原則として開発行為は許可されませんが、都市計画法第34条各号に定める要件に該当する場合に限り、例外的に許可が下ります。
つまり、市街化調整区域内の倉庫が、過去に適法な手続きを経て「営業倉庫」として建築するための開発許可を得ている場合、その建物は倉庫業登録の対象となる可能性があるのです。
注意すべき「許可の目的」
ここで非常に重要なのが、開発許可を得ていたとしても、その「目的」です。開発許可は、特定の目的のために与えられます。例えば、以下のようなケースが考えられます。
- 「農業用倉庫」として許可を得た建物
- 「資材置場」として許可を得た建物
- 「特定企業の自己利用倉庫(自家用倉庫)」として許可を得た建物
これらの目的で許可された建物を、不特定多数の荷主から寄託を受けて物品を保管する「営業倉庫」として使用することは、原則として「目的外使用」にあたり、認められません。
したがって、倉庫業登録を目指すには、単に開発許可を受けているだけでなく、その許可内容が「倉庫業を営むこと」を許容するものであるかを正確に確認する必要があります。
しかし、古い建物の場合、所有者様自身も開発許可の有無やその詳細な内容を把握していないケースがほとんどです。書類が散逸してしまっていることも少なくありません。
まとめ:市街化調整区域の倉庫登録は、まず「建築の専門家」による適法性調査から
市街化調整区域にある既存倉庫で倉庫業を営むには、高いハードルが存在します。最大の壁は、倉庫業法の基準以前に、その建物が都市計画法や建築基準法に適合した「適法な建築物」であるかという点です。
特に「営業倉庫としての開発許可」の有無や取得可否は、登録の可否を左右する極めて重要な判断となります。これら建築・開発許可に関する専門的な調査や判断については、まずは一級建築士へご相談ください。
なお、行政書士法人シグマでは建築士のご紹介は行っておりませんが、建築士による確認が完了した後の「倉庫業登録手続き」や「物流法務」の面で、皆様を強力にサポートいたします。法的な成り立ちがクリアになった段階で、ぜひ一度ご相談ください。