倉庫業登録の申請において、最も多くの事業者が取得を目指すのが「1類倉庫」です。日用品から電気機械まで幅広い物品を保管できる汎用性の高さが魅力ですが、その分、法律が定める「施設設備基準」は非常に厳格です。
この基準は、一般的な建築基準法よりもさらに厳しい要求事項が含まれており、「普通の倉庫なら大丈夫だろう」という認識で申請準備を進めると、思わぬところで壁に突き当たることになります。特に、建物の「強度」や「防水・防湿性能」などは、専門的な図面や計算書がなければ証明できません。
この記事では、倉庫業登録を専門とする行政書士が、1類倉庫に求められる全14項目の施設設備基準を、実務で躓きやすいポイントも交えながら徹底的に解説します。
そもそも「1類倉庫」とは?
倉庫業法では、保管する物品の性質に応じて倉庫を8つの種類に分類しています。その中で「1類倉庫」は、最もハイグレードな常温倉庫と位置づけられています。
- 1類倉庫で保管できる物品
- 第1類~第5類物品。具体的には、日用品、繊維、紙・パルプ、電気機械、食料品(冷蔵・冷凍品を除く)など、危険品や高圧ガス、冷蔵・冷凍が必要な物品を除き、非常に幅広い貨物を取り扱うことが可能です。
そのため、これから倉庫業を始める事業者のほとんどが、この1類倉庫での登録を目指すことになります。
【保存版】1類倉庫 施設設備基準14項目チェックリスト
以下に、1類倉庫に求められる14項目の基準を一覧にまとめました。貴社の倉庫がこれらの基準を満たしているか、またそれを証明できる書類があるか、という視点でご確認ください。
| No. | 項目名 | 基準の概要 |
|---|---|---|
| 1 | 使用権原 | 倉庫建物および敷地について、所有権または有効な賃貸借契約があること。 |
| 2 | 関係法令適合性 | 建築基準法、都市計画法、消防法などの関係法令に適合し、特に「完了検査済証」を有していること。 |
| 3 | 土地定着性等 | 土地に定着し、屋根および周囲に壁を有する工作物であること。 |
| 4 | 外壁の強度 | 軸組み、外壁などが、国土交通大臣の定める基準(2500N/㎡以上)に適合していること。 |
| 5 | 床の強度 | 床の強度が、国土交通大臣の定める基準(3900N/㎡以上)に適合していること。 |
| 6 | 防水性能 | 屋根、外壁などが雨水の浸透を防止する性能を有すること。 |
| 7 | 防湿性能 | 床面に防湿措置が講じられ、地面からの水分の浸透や結露を防止できること。 |
| 8 | 遮熱性能 | 屋根や外壁に断熱材を用いるなど、国土交通大臣の定める遮熱措置(平均熱貫流率4.65W/㎡K以下)が講じられていること。 |
| 9 | 耐火・防火性能 | 建物が耐火構造、準耐火構造であるか、または防火地域・準防火地域内の防火性能を満たしていること。 |
| 10 | 災害防止措置 | 危険物施設などに近接する場合、防火上有効な距離を保つか、防火壁などの措置が講じられていること。 |
| 11 | 防火区画 | 倉庫内に事務所や住宅などがある場合、耐火構造の床や壁、防火戸などで区画されていること。 |
| 12 | 消火設備 | 消防法に基づき、消火器などの消火器具が適切に設置されていること。 |
| 13 | 防犯措置 | 出入口や窓などに施錠設備、防犯カメラ、警備システム、夜間照明など、防犯上有効な設備を有すること。 |
| 14 | 防鼠措置 | 床と壁の取り合い部分に防鼠材を設けるなど、ねずみの侵入を防止する設備を有すること。 |
特に審査が厳しい「3つの難所」とその証明方法
上記14項目の中でも、特に審査が厳しく、専門的な証明が求められるのが以下の3点です。
外壁・床の強度【構造計算書が必須】
審査官は、「床の強度が3900N/㎡(約400kg/㎡)以上」「壁の強度が2500N/㎡以上」という数値を、図面上で客観的に確認できなければ許可を出しません。この証明に不可欠なのが、建築確認申請時に作成された「構造計算書」です。また、床や壁の具体的な仕様(コンクリート厚、鉄筋の配筋など)を示す「矩計図(かなばかりず)」や「構造図」も重要な判断材料となります。これらの書類がなければ、強度の証明は極めて困難です。なお、建築確認済証・検査済証に記載されている建物用途が、倉庫業を営む倉庫になっている場合は、床の強度が3900N/㎡以上があると判断され、構造計算書は不要です。
防水・防湿性能【図面上の仕様が問われる】
「雨漏りしていないから大丈夫」というレベルの話ではありません。審査では、屋根の防水層の種類や、外壁の仕様が図面上で確認されます。特に見落としがちなのが「防湿性能」です。地面に接する1階の床(土間コンクリート)の下に、湿気が上がってくるのを防ぐための「防湿フィルム」が敷設されているかどうかが、図面(矩計図など)でチェックされます。この記載がない場合、追加の証明が必要となることがあります。
防犯措置【意外な見落としポイント】
外部からの侵入を防ぐために扉・窓・シャッターが施錠できるかが重要です。そして、その施錠体制が図面(建具キープランや建具表)でチェックされます。図面に施錠設備の記載がない場合は、施錠体制がわかる写真の提出が必要になります。
「一級建築士による確認表」が登録成功の鍵
これら14項目の複雑な基準を、申請者や行政書士だけで完全に証明するのは困難です。そこで決定的に重要になるのが、建築の専門家である「一級建築士」の協力です。
申請前に申請者がセルフチェックする為の「チェックリスト」が用意されています。チェックリストに記入することで施設基準を満たしているか、また申請時に必要な図面等の添付書類が整っているかを確認することが出来ます。このチェックリストは倉庫業登録申請時の添付書面の一つになっています。
チェックリストとは別に「確認表」があり、一級建築士に確認してもらい、これを添付することにより申請後の審査期間が短縮できる場合があります。
行政書士法人シグマでは、倉庫業登録申請の際に、一級建築士が作成・記名押印した「確認表」を添付することをおすすめしています。この確認表は、14項目それぞれについて、「どの図面のどの部分を見れば基準を満たしていることが確認できるか」を明示した、いわば審査官向けのガイドマップです。これを添付することで、審査の確実性が格段に向上し、結果として審査期間の短縮にも繋がります。
図面だけでは判断が難しい場合や、図面と現況に差異がある場合は、一級建築士の協力が不可欠です。
まとめ:その倉庫、図面と現況に「ズレ」はありませんか?
倉庫業登録の審査は、すべて「提出された書類(主に図面)」に基づいて行われます。運輸局の担当官が現地確認は行われません。そのため、いくら立派な倉庫であっても、それを証明する図面がなければ登録はできません。また、図面が存在していても、その後の改修などで実際の建物の状況(現況)とズレが生じている場合、その矛盾点を解消しない限り、申請は受理されません。
「うちの倉庫は基準を満たしているはず」という自己判断は禁物です。実際に登録手続きを進める前に、まずは専門家による客観的な診断を受けることを強くお勧めします。行政書士法人シグマでは、お手元の図面等をもとにした簡易診断を承っておりますので、お気軽にご相談ください。
行政書士法人シグマでは、倉庫業登録や物流法務に関するご相談を承っております。自社倉庫の要件確認や手続きの進め方に不安がある方はお問合せください。