「倉庫業登録に必要な費用は、登録免許税くらいだろう」「申請書類を出せば2ヶ月で登録できるらしい」。倉庫業への参入を検討される際、このような概算で予算やスケジュールを組んでいませんか?もしそうなら、その計画は非常に危険かもしれません。
結論から申し上げると、倉庫業登録は「登録免許税額と行政書士報酬」だけで完結するほど甘くはありません。実際には、倉庫が法律の定める「施設設備基準」を満たすための改修工事に数百万円単位の予期せぬコストが発生するケースもザラにあります。この記事では、数多くの倉庫業登録を手掛けてきた専門家の視点から、費用と期間のリアルな全体像を徹底的にシミュレーションします。
倉庫業登録にかかる費用の全体像【3つのコスト】
倉庫業登録の費用は、大きく分けて3つの要素で構成されます。多くの方が見落としがちなのが、③の設備投資・改修工事費です。
法定費用(実費)
- 登録免許税
- はじめて倉庫業登録を取得する場合:90,000円(新規登録)
- 倉庫業登録業者が倉庫を新設する場合:30,000円(変更登録)
これは、運輸局での審査が完了し、登録通知書を受領後に国へ納付する税金です。
行政書士報酬(申請代行費)
- 弊法人の基本報酬目安
- 660,000円(税込)~
これには、倉庫業登録の専門家として、以下の業務すべてが含まれます。
- 候補物件の法適合性診断(コンサルティング)
- 現地調査
- 膨大な申請書類一式の作成
- 運輸局や建築部局との事前協議・調整
- 申請の代理提出
※上記は、申請に必要な建築図面が揃っている場合の目安です。図面の作成や用途変更の確認申請が必要な場合は一級建築士の費用が別途発生します(当法人では一級建築士事務所の紹介は行っていません)。
設備投資・改修工事費(ここが最大の変動要因)
倉庫業登録の総費用を左右するのが、この設備投資・改修工事費です。多くの既存倉庫は、そのままでは倉庫業法が定める厳しい施設設備基準(床強度、壁強度、防水・防湿、防犯措置など)を満たしていません。
例えば、以下のような工事が必要となるケースがあります。
- 警備会社とのオンライン警備契約(ランニングコストが発生)
- 床の強度を証明するための構造計算、場合によっては床の補強工事(高額)
- 壁の強度を証明するための計算、場合によっては壁の補強工事やラック設置工事(高額)
特に構造に関わる補強工事が必要と判断された場合、費用は数百万円単位に跳ね上がることもあり、事業計画そのものを見直さなければならない可能性も出てきます。
営業開始までの期間の全体像【最短でも4~6ヶ月】
「申請から2ヶ月で登録できる」という情報は間違いではありませんが、それは全体のプロセスの一部に過ぎません。
標準処理期間(運輸局での審査期間):約2ヶ月
これは、完成した申請書類一式を運輸局に提出してから、審査が完了し、登録通知書が交付されるまでの一般的な期間を指します。あくまで「書類を出した後」の話であり、この期間を短縮することはできません。また、運輸局の事務処理の混雑状況で2カ月より長期化することもよくあります。したがって、審査期間2カ月は「目安」だと考えてください。
事前準備期間(ここが勝負):2~4ヶ月以上
実際には、申請に至るまでの準備期間の方がはるかに長く、かつ重要です。この期間に以下の作業を行います。
- 候補物件の選定と法適合性診断
- 建築確認済証や竣工図面などの書類収集
- 図面がない場合は、建築士による現地実測と図面復元
- 施設設備基準を満たすための改修工事
- 行政書士による申請書類の作成と行政協議
特に、図面の復元や大規模な改修工事が必要な場合、準備期間だけで半年以上かかることも珍しくありません。
結論として、倉庫業を思い立ってから実際に営業を開始するまでは、どんなにスムーズに進んでも4ヶ月、通常は半年以上かかると見ておくのが現実的なスケジュールです。
コストと期間を圧縮するための「3つの鉄則」
では、どうすればこの費用と期間を最小限に抑えることができるのでしょうか。答えは、プロジェクトの初期段階にあります。
- 鉄則1:「既存適合物件」を選ぶ
建物用途が営業倉庫用(倉庫業を営む倉庫)として、最初から倉庫業法の基準を満たしている、あるいは軽微な改修で済む物件を選ぶことができれば、最大のコスト要因である工事費をゼロに近づけることができます。 - 鉄則2:「図面が揃っている物件」を選ぶ
建築確認済証、検査済証、竣工図面一式が揃っている物件を選べば、数十万円から数百万円かかることもある図面作成費用とその期間を丸ごと節約できます。 - 鉄則3:行政書士に「物件契約前」に相談する
これが最も重要です。月額100万円の賃貸契約を結んだ後に、「基準適合のために1,000万円の工事が必要です」と判明するのが最悪のパターンです。私たちにご相談いただければ、物件を契約する前に「この物件で登録可能か」といった事業判断の根幹に関わる情報を提供できます。
シグマの申請実績と報酬例
案件の難易度によって報酬は変動します。以下に実際の事例をいくつかご紹介します。
- ケース1:関東運輸局管内・1類倉庫(1,600㎡)新規登録
図面が揃っており、比較的軽微な改修で済んだ案件。
報酬額:880,000円(税込)~ - ケース2:図面がない古い倉庫の野積倉庫申請
建物での登録は断念し、土地部分を「野積倉庫」として登録する戦略に転換。測量や図面作成の調整も行った案件。
報酬額:693,000円(税込)~
まとめ:総費用と期間は、すべて「物件」で決まります
倉庫業登録に一律の料金プランが存在しないのは、費用と期間の9割が「選んだ物件のコンディション」によって決まってしまうからです。電卓を叩いて事業計画を立てる前に、まずはその物件がどのくらいのポテンシャルとリスクを抱えているのかを正確に知る必要があります。
行政書士法人シグマでは、お客様が致命的な失敗をしないために、Zoom等を活用した「無料簡易診断サービス」を提供しています。「この物件で登録を目指すべきか否か」、その最初のジャッジを私たち専門家にお任せください。
行政書士法人シグマでは、倉庫業登録や物流法務に関するご相談を承っております。自社倉庫の要件確認や手続きの進め方に不安がある方は、お気軽にご相談ください。